預貯金が遺産分割審判対象に
日付:2016年12月21日
カテゴリ:相続について
平成28年12月19日、最高裁判所より預貯金が遺産分割の審判対象になるとの判断が下されました。 (日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG19HAR_Z11C16A2EA2000/
記事を読んでも法律を勉強されていない一般の方にはどういうことなのかよくわからないと思いますので、説明します。
まず、遺産の中には、相続人全員で分配方法を決めなければならない(決まらなければ、審判官(裁判官)が最終的に判断します。)場合と被相続人が死亡した時点で当然に法定相続分を相続する場合、つまり相続人全員で分配方法を決める必要がない場合があります。
遺産分割協議が必要な相続財産は、現金、不動産、株式等があります。遺産分割が不要な相続財産として損害賠償請求権等の金銭債権があります。預貯金も最高裁判所の上記判決が出されるまで、遺産分割が不要な遺産でした。そのため相続財産が預貯金しかない場合遺産分割協議をする必要がありませんでした(もっとも、遺産分割不要な相続財産でも相続人全員で遺産分割協議の対象財産として扱えば遺産分割協議できます。)。
今回預貯金を遺産分割の審判対象と判断した理由の一つとして最高裁判所は「遺産分割は相続人同士の実質的な公平を図るものであり、できる限り幅広い財産を対象とするのが望ましい。」と言及しています。例えば、被相続人の生前中に被相続人から特定の相続人に対してのみ財産を贈与したり(特別受益)、特定の相続人のみ被相続人を介護し、財産の援助をしたりした(寄与)場合、遺産分割の際、特別受益、寄与を考慮して相続財産を分配する必要が出てきます。しかし、特別受益・寄与が考慮できるのは遺産分割協議で決めなければならない財産がある場合だけです(もっとも相続人全員が承諾しているときには別です。)。主な相続財産が預貯金しかなかった場合でかつ相続人の内、一人でも預貯金を遺産分割協議することに承諾しなければ、特別受益、寄与分の主張する場がなくなり、一切考慮されることがありませんでした。しかし当該弊害が今回の最高裁判所の判決で幾分解消される可能性が出てきました。 預貯金は、遺産分割協議を柔軟に解決するためには、うってつけの遺産であり、また生前中の相続人と被相続人との関係性を遺産分割に反映させやすい点から考えても、今回の最高裁判所の判断は現実に適うものであると思います。