代償分割の思わぬ落とし穴
日付:2016年11月12日
カテゴリ:相続について
そもそも「代償分割」って何?
相続財産の中に不動産がある場合、分配方法として、その不動産を相続人の1人が相続し、他の相続人は、不動産を相続した方から自分が相続するはずだった権利分を金銭で受けとる方法が採られることがあります。このような分配方法を代償分割といいます。
代償分割は、不動産を共有ではなく単独で相続できるので、相続した方が、使用方法や、売却のタイミングを自由に決めることが出来ます。また不動産の価値が上がれば、事実上他の相続人より多くの相続財産を取得したことににもなります。もちろん下がった場合、事実上他の相続人より取得する相続財産が少なくなります。
すぐに不動産を売却する場合は要注意
すぐに不動産を売却する予定で、代償分割で不動産を取得した方は、遺産分割協議の際に注意が必要です。なぜなら、売却によって譲渡所得税が発生する可能性があるからです。譲渡所得税は、不動産を取得した時の費用と売却する際に要する費用の総額よりも売却価格の方が高い場合に発生します(場合によっては特別控除等もありますが、複雑になりますので今回は省略します。)。相続の場合、相続で取得した者が購入していないことに加えて、何十年も前に購入している場合がほとんどなので、取得費用が明らかでない場合も多々あります。その場合、売却価格の5%が取得費用とされます。他の相続人に支払った代償金も取得費用に含めることが出来ず、代償取得した相続人のみが譲渡所得税の負担を負うことになります。
例えば、相続人が子供2人(Aさん、Bさん)で、何十年も前から父親(被相続人)が所有する不動産(価値が2000万円)をAさんが代償分割で取得し、AさんがBさんに1000万円の代償金を支払ったとします。その後すぐにAさんが不動産を売却した場合、取得費用が不明であれば、取得費は売却価格の5%なので100万円となります。よって譲渡所得税として(2000万円-100万円)=1900万円×0.2の380万円が課せられるので(今回の事例では、売却の際の諸費用は含めていません。)、事実上、Aさんの受領額は1000万円-380万円の620万円となります。さらに平成49年12月31日までは譲渡所得税に復興特別所得税も加算されるので、Aさんが事実上受領できる金額はより少なくなります。他方Bさんは1000万円そのまま受け取ることができます。
弁護士からのコメント
遺産分割の際、相続税意外の税金も関係してくることが良くあります。遺産分割協議書に署名・捺印する前に、専門家に内容を確認してもらうのが、後日の紛争を回避することになります。何か気になる店がございましたらお気軽にご連絡ください。