過払い金の消滅時効を考える
日付:2016年12月17日
カテゴリ:過払い金について
不当利益返還請求の権利、つまり過払い金請求のできる権利の消滅時効は、10年に定められています。過払い金があり請求する権利があっても、10年間なんらかの行動(請求など)を起こさなければ、請求する権利を失ってしまいます。では、消滅時効の起算点はどこでしょうか?
過払い金の消滅時効の起算点
過払金返還請求権は取引が終了した時(取引終了時)から10年の経過で消滅時効が成立します(最高裁平成21年1月22日判決)。よって、取引終了時から10年経っていなければ10年以上前に発生した過払金を含め取引中に発生した過払金は全額請求できます。 簡単に考えると「返済した日」から10年間になります。例えば平成18年10月に完済していれば、平成28年の10月に時効が成立します。
取引終了時から10年の経過で時効成立
取引終了時から10年で消滅時効は成立するのでひとつの取引であれば、最後の取引日から10年経っていなければ消滅時効は成立しませんが、ひとつの基本契約の中で借入と完済を繰り返した場合は、最後の完済が時効の起算点となる場合もあります。その取引が途中で何度か完済・解約・再開などがあり、取引が複数に分かれる場合、一度完済した時から10年経っていると、その時までの過払金には消滅時効が成立します。 例えば、第1取引が平成10年~平成18年、第2取引が平成19年~平成27年の場合、第1取引は10年経過時の平成28年に時効によって消滅する場合があるので注意が必要です。 また、10年近く前に借り入れができなくなった人も注意が必要です。これは、過払金の消滅時効を巡る争点(取引時の終了)で貸金業側が主張することがあるからです。
取引終了時の判断基準
「取引の終了」について、最高裁の判決は、「基本契約に基づく新たな借入債務の発生が見込まれなくなった時点、すなわち、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点」と表現しています。この表現から、「取引の終了時」はいかなる事実をもって終了時というのか明確にしていません。「取引の終了日」と「最終取引日」がイコールではないことです。そのため、いつが取引終了時かは、個々の取引の問題であるため、消滅時効の起算点がいつかが、争点となる場合があります。第1取引や第2取引がある場合、分断扱い(第1取引は時効)になるのか?一連計算扱い(第1取引も第2取引も1個の連続した取引)になるのか?クレジットカードの1回払いは一連計算できないのか?途中で貸付停止になっている場合は?など多くの争点が発生します。複数の取引があっても、一連計算(1個の連続した取引)の方が過払い金の金額も多くなりますが、認められるかどうかは個々の事案によって異なります。①第1取引の長さや第2取引までの空白期間の長さ、②第1取引の契約書の返還有無、③ATMカードの執行手続きの有無、④空白期間における借り手と貸金業者との接触状況、⑤第2の基本契約が締結されるに至った事情、⑥利率等の契約条件の異同、その他いろいろな事情で1個の連続した取引と評価できるかが判断されます。
消滅時効を中断させるためには・・・
また、消滅時効期間の進行は中断させることができます。もし過払い金が発生していることが分かっていて、時効までに時間がないという場合には時効の進行を一時停止することをお薦めします。簡単に言うと「過払い金を返して」と請求することです。取引履歴開示請求だけでは時効は中断しませんので、過払い金を請求し催告による時効停止が必要です。